Chapter 1
近年、事業再生が注目されています。 中小企業経営者の立場からすれば、破産や民事再生という法的整理については、倒産というイメージがついてしまうことになるため、敬遠されてしまいがちです。倒産というイメージがつくことによって真の意味での再生が困難になってしまうからです。
特に地方都市においては、中小企業経営者は同時に地元の名士でもあるため、法的整理を行うことによりその経営者自体が事業に失敗したというイメージを与えることになります。せっかく新会社を設立したり、再生後の経営努力を行ったりしても、その後経営が困難となってしまうということも考えられるのです。
平成12年に施行された民事再生法に基づき、多くの企業が再生を果たしています。現在においてもなお民事再生という法的整理が有用であることは否定いたしません。しかしながら、民事再生後の二次破綻などの状況を考えると、過剰債務の免除(金融支援)という処理のみならず財務内容の改善が中小企業の再生にとって重要な要素であるという認識がなされるようになってきました。
なかでも注目を集めるのが、中小企業再生支援協議会を利用した私的整理のスキームです。同スキームは事業計画の改善を前提に様々な再生手法を用意しています。
また、全国の商工会議所に起点をおき、対象企業を中小企業としていることから、企業規模に関わりなく活用できる点がメリットです。
その他、事業再生ADRなど様々な私的整理スキームが発表されるなど、事業再生の手法に関して様々な議論がなされるようになっています。
Chapter 2
support
中小企業は個人事業を含めると全国で約420万社あると言われています。
中小企業は日本の企業の大部分を占め、地域経済と密着した活動を行うことにより、日本の経済の基盤を形成しています。
このように日本経済の根幹をなす中小企業ですが、長引く不況、歴史的な円高、未曾有の大災害である東日本大震災により、営業機会を損失し、経営基盤を失うこととなり、近年急激に疲弊している状況と言えます。
Influence
中小企業の再生がうまくいかず、破産に陥ってしまった場合、どのような影響が考えられるでしょうか。
まずは、中小企業の破産により、従業員の雇用の機会が失われてしまいます。従業員の雇用機会の喪失により、従業員は生活の糧を失うことになり、家族を含めた生活の基盤を失ってしまうことになります。
また、中小企業が倒産すると、取引先企業としては売掛金が回収できなくなってしまうことはもちろん、今後の取引の機会を喪失してしまうことになります。売掛金の未収リスクが深刻であれば、中小企業の倒産が取引先企業の連鎖倒産を呼び起こすことにもなりかねません。
中小企業を窮状から救い事業再生を行うということは、このような影響を回避することにつながります。すなわち、中小企業の再生により、当該企業を救済するのみならず、そこで雇用される従業員(ないしはその家族)、周辺取引企業及びその従業員を支援することにもなります。
中小企業が地域に密着した活動を行っている状況からすれば、事業再生が地域経済を救うという表現もあながち大げさとは言い切れないのではないでしょうか。事業再生により地域経済を支援することが、ひいては日本経済の復興にもつながることになるのです。